いつかはトムソーヤ

映画、本、写真

2021年を振り返る6つの動画

ユーチューバーでもブロガーでもインフルエンサーでもないやつが何を、という感じなのだが、2021年ってなんか芸術面で楽しいことが多かった。本、雑誌、映画、テレビ番組、ブログでもいろいろおもしろいコンテンツはあったが、今は動画コンテツへのアクセスに優れた時代。順不同で記録しておきたい。

1つ目:「象は鼻が長い」の謎-日本語学者が100年戦う一大ミステリー #10

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YouTubeに求めたコンテンツはこれだ!というものの本命がついに現れたと思う。自分のYouTube歴といえばもう10年以上になるし、ユーチューバー目的で鑑賞し始めたのもかなり早かったと思う。当時は瀬戸弘司のチャンネル登録者も8万人くらいだったし、まだジェットダイスケさんとか秋葉さんとかがこのエリアのメインにいたころ。

このときのユーチューブは今のように高度にビジネス化されておらず、あくまで動画単位で視聴するものだった。芸人のように複数人で運営するチャンネルも少なく、よくも悪くも素人の世界だった。

しかしYouTubeがテレビ化し、チャンネル単位で視聴し、芸人ようにファンが付き、広告で収益化されるようになった。けっきょくコンテンツはテレビの下位互換となり、テレビ制作の技術がプラットフォームが変わっても通用すると証明されただけだった。

数年前からYouTubeを知的好奇心を満たす手段として活用する萌芽はあった。東大卒クイズプレイヤーのチャンネルや予備校講師の解説チャンネルも出てきた。しかしそれでも前者は依然としてあくまでエンタメが主眼、後者は教育コンテンツをユーチューブにアップロードしているだけだった。

そんな中、今年現れたのが「ゆる言語学ラジオ」だった

端的に言えば「大人が提出期限のない自由研究を趣味で続ける」コンテンツ。これが自分に刺さった。特に、曲がりなりにも文章を書くことを仕事にしている自分としては、ああ、言葉を真面目に学問するとこんなにおもしろいのか、と気付かされたコンテンツだった。

このチャンネルで最初に見た「象は鼻が長い」は、そうした要素がバランスよく盛り込まれた傑作であった

1年でこのコンテンツ量。引き続き2022年も注目のチャンネルである。

2つ目:【新製品解説】Nikon「Z9」~新世代ミラーレスフラッグシップ~

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ユーチューブにプロや専門家が参入して久しい。カメラ業界でもプロカメラマン、テレビマンなどが活躍しているが、このチャンネルは元技術者の方がカメラを語るというもの。この内容が、Z9の製品としての先進性だけでなく、ニコンという会社が開発についてどう向き合ってきたのかを改めて振り返っていた。ニコン社内の技術者の絶え間ない技術開発や、実は将来を見据えていた過去のカメラ開発。それらを信用して認め続けた経営陣など、言及する視点が他の解説者とは違っていて、大変印象に残った

そして、そうした解説が積み重なると、なぜか感動に変わる。

今年のはじめ、ニコンにとってこれほど復活ののろしを上げる1年になるとは思いもしなかった。春先にZ9の開発発表したときも、どうせソニーの後塵を拝するがっかりカメラなんだろうなと。

しかし出てきたのは、ソニーキヤノンを凌ぐ現状最高峰のフルサイズミラーレスカメラだった。カメラ業界は世界的な市場縮小にも関わらず、人間では区別がつかないレベルの成果物の差を求めるあまり、スペックを高め合う消耗戦を続けている。ニコンはミラーレス化に遅れをとり、完全に3番手、あるいは、APS-Cカメラを展開する富士フイルムにすら負けていた。

そこに来て出たのがZ9である。カメラのスペックもさることながら、開発までの経緯があまりに完璧な伏線回収となっている点にぐっとくる。ニコンは2010年ごろに「ニコン1」というミラーレスカメラに取り組んだ。

しかしセンサーサイズは1インチ、ボディもファインダーなし、キットレンズ以外は付けないのが前提という感じ。とても将来を見据えたものとは思えないものだった。私も所有していたものの(売却しても二束三文なのでまだ持っている)、とても買ってよかったと思える製品ではなかった。

そのニコンがZ9でやったことは、メカシャッターの廃止でレンズ後玉とセンサーをできるだけ近づけて光学性能を最大限まで引き出し、被写体検出技術を強化し正確なオートフォーカスを実現することだった。

これは、すべてニコン1でニコンが取り組んだフランジバックの短縮とメカシャッターレス、位相差AFの採用から細くても粘り強く続けてきた開発の賜物である。

ニコン1はニコン黒歴史から、Z9という2020年代のカメラ性能競争の先鞭をつける製品の生みの親となった。

この動画は、一企業の事業についてそのスタートと成果物への結実を象徴する1本だった。

その3:連続テレビ小説「おかえりモネ」

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おかえりモネに関する公式動画がユーチューブからなくなっているので、主題歌の「なないろ」を貼っておく。個人的に朝ドラはめったに真剣に見ないのだが、今作は長年好きなバンプの歌が聞けるし、勝手に是枝作品に出てほしい若手女優ナンバーワンと思っている清原果耶が出ているので見た。

朝ドラは現代劇がメインであるべきだと強く思う。正直、2021年に戦前のテンプレ描写をなんどもやられても飽きる。女性が結婚して、子供が生まれて幸せなのに、夫が戦地に散ってしまう。いい加減、おしんから卒業してくれと。

まあ、こうしたテーマはやはり感動的なので、何度も使われる魅力があるのもよく分かる。そうした意味でおかえりモネのキーワードは「天気」「災害」「若者のキャリア選択」だった。自分はこうした背景のもと、普段の生活と地続きだと思える登場人物が暮らしている現代劇がみたかった。

清原果耶や坂口健太郎、その他の出演者の確かな演技力や表情の魅力、脚本の現代性と合わせて、とてもお気に入りの朝ドラになった。

その4:ジェームズ・ボンドとして

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アマゾンプライムやAppleTVで配信されたダニエルクレイグが演じた5作品を振り返るドキュメンタリー。2021年、007シリーズは一つの歴史を迎えたが、その意味の重大さが端的にまとまった1本だった。

思うところが多すぎて難しいんだけど、007シリーズでここまで制作の裏側やボンド俳優が考えていることが明らかになったのって珍しいのではないかと思う。このドキュメンタリーでは、カジノ・ロワイヤルダニエル・クレイグがボンドを襲名したときの騒動が紹介されている。話はよく目にしていたけど、実際に当事者たちから話を聞くと生々しい。

これを見てから今年のダニエルボンド最終作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」を見ると更に魅力が高まると思う。ラストシーンでボンドは「僕と同じ青い目だ」という。「ボンドが青い目なんて…」と批判にさらされた現実の世界を映画世界までにも取り込み、劇中の感動として昇華するのはお見事としか言いようがなかった。

tomsoya.hatenablog.com

その5:大分トリニータ

J2に降格してしまったけど、天皇杯準優勝。しかも劇的な幕切れだった。J地方クラブがこんなに輝ける日はしばらく来ないかもしれない。

この動画は、大分の監督、片野坂さんの最後のメッセージ。サッカーやスポーツの枠に留まらず、リーダーや部下を持つ人全員に響く話だし、まだそうした立場にない自分は「こんなリーダーの下につきたい」と強く思った。今の日本のスポーツ界随一の名指導者であることは疑いようもない。

その6:Ginger(TOMOO)

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ツイッターで夏頃見かけた。みんな言っているけど、このサムネ、雰囲気のイメージを裏切られる声で歌うのに相当おどろいた。若手女性シンガー応援マンとしては今いちばん期待しているアーティストさん。まだ公開されてる曲もすくないと思うので、来年はたくさん聞きたいです。

 

なんか、2021年まあまあいい年だったなと思っている。公私ともに自分のやりたいようにできたことで、ストレスは減ったし、感じるストレスもえいや!って発散したことが多かった。

20代後半、知的好奇心を持ち続ければ、自分次第でもっと楽しくなると思っている。