現在の名探偵コナンの基礎ができたエピソード
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小五郎と新一のもとに殺人予告をほのめかした"季節外れのハロウィンパーティー"への招待状が届く。差出人の名前がベルモットだと聞いた哀は必死になってコナンを引きとめる。小五郎がパーティー会場の幽霊船・シーファントム号に到着すると、主催者と名乗る亡霊船長から、船に乗ったときに手渡されたカードと同じカードを持つ7人の仲間を探せという芝居がかった指示がくだる。同じころ、医師の新出から哀あてに電話がかかってきた。咳が止まらない哀に新出は一度設備の整った病院で診てもらったほうがいいというのだ。阿笠邸にチャイムが響きわたる。哀が出ると、そこにいたのは新出ではなくジョディであった。ジョディは新出の車が故障したので代わりに迎えにきたというと哀を車に乗せてしまう。これを見かけた新出は、不審に思いジョディの車を尾行する。殺人のあったシーファントム号では、現場を調べた小五郎がカードとアリバイのないミイラ男が犯人と決めつけていた。そこに現れたのは包帯を外した工藤新一。驚くモンスターたちを前に、新一は殺人事件の推理を始める。その頃、ジョディは新出を人気のない埠頭におびき寄せ…。
コミックス42巻すべてを費やして描かれる二元ミステリー。
この前と後では決定的にコナンという話自体が変わった。
これまでの名探偵コナンでも圧倒的に最重要の話だろう。
ジョディの「どうして年を取らないの」
灰原の「ただ死にに来たんじゃないわ、すべてを終わらせに来たの」
シェリーに告げた「こんな研究を進めた両親を恨むのね」
ベルモットが蘭に放った”Move it, Angel !”の叫び
NYで新一がベルモット扮する通り魔に言い放った「わけなんているのかよ…」の回想
赤井の「俺はまだ、その少女に会うわけには行かないんでね」というつぶやき
ジンが「工藤新一ってガキ、知ってるか?」と尋ねたとき、ベルモットが新一と蘭を思い受かべながら「知らないわ」と返した時の表情。その後の「長い間待ち望んだシルバーブレットに」
こうした言葉が、いまのコナン考察のスタートになる
もうこの時のベルモットまじでやばい。息を吐くように重要ワード連発
全シーン全コマに伏線があってもおかしくない。
伏線がありすぎて覚悟なしに読むと足に絡まりそう。
この回抜きではほとんど今のコナンの組織編の筋は追えない
二元ミステリーの前と後で決定的に違うものはなにか
二元ミステリーでは、黒の組織の存在目的に、重大な示唆が与えられた。
それまでの名探偵コナンでは、とにかく「黒の組織は悪いことをする組織」という情報しか与えられてこなかった。
たとえるなら007のスペクター。
暗殺、紛争、環境破壊などなど、どれくらい悪いことをしたかが名誉であり彼らの満足。
「黒の組織」も連載初期はそうだったんだよね。すくなくともジンとウォッカは。
それが、長期連載化の決定と同時に徐々に転換され始める。
上記でも言及したとおり、おそらく作者が現在に至る名探偵コナンという話の全体像を描いたのは、12巻〜18巻ごろ。
(注・コミックの発売時期と連載はずれるし、執筆はさらに前となる。少なくとも偶然新幹線でジンに遭遇するような安易な描写を入れてた4巻頃は未定だっただろう)
12巻では黒の組織として3人目の人物「テキーラ」が出てくる。ここでテキーラが優秀なプログラマーのリストを高値で買ったというような内容が明かされる。
あれ?組織ってこんな知的な組織だったんだっけ?
そして灰原が初登場する18巻。灰原はAPTX4869に幼児化する作用があると知っていたことを明かす。
あれ?組織ってこんな高度な薬を作る組織だったんだっけ?
ただの悪徳組織ではないということが強く示唆され、それは24巻「黒の組織との再会」でも37・38巻「黒の組織との接触」でさらに間接的に示される。
それがジョディ先生の口を通じて初めて言葉となって出てきたのが
ジョディ「あなた、どうして…どうして年をとらないの」
というセリフなんだろうと思う。
これにはしびれるんじゃない?
それまで、幼児化というコナンの要素はある種、エンターテイメントにおいて物語を全身させるエネルギーとして機能してた。
他の話で例えるなら、「JIN」での南方仁先生のタイムスリップ、「時をかける少女」でのタイムリープ、「君の名は。」での入れ替わり、最近だと「テセウスの船」のタイムスリップが流行った。
ただ、これらの作品では「なぜ現実にはありえないことが起こるのか」「どういうメカニズムで起こるのか」とかは、基本的に許容されることが前提で、それ自体は物語の主たる謎にはならないよね
(後で気がついたけど、JINは脳の奇形腫瘍自体が謎で、タイムスリップのカギになっていた。これはとても新鮮だった)
「君の名は」で、入れ替わりがどういうメカニズムで入れ替わるのか、それはだれがコントロールしているのか?がメインのお話になると考えたら、いやいや君の名はの魅力はそうじゃない、となるだろう。
それが名探偵コナンでは、ジョディの指摘とベルモット編の終結によって
「なぜコナンという作品では『幼児化』するのか」
「その薬はどんな目的でだれが作っているのか」
という、これまでのエンタメでスルーされてきた要素そのものが最大の謎になっている点。
二元ミステリー以前のコナンなら、
誰が組織のボスなのか?
ボスにコナンはどうやって勝つのか?
コナンは元の姿に戻れるのか?
っていうのが一番関心の高いテーマだった。
それが、二元ミステリー以降
誰が組織のボスなのか?
ボスにコナンはどうやって勝つのか?
コナンは元の姿に戻れるのか?
の解決は
「幼児化」に関する謎を解決した後の結果としてしか生まれないことが確定するわけ。
物語の世界観そのものがファンタジーな作品には当てはまらないけれど
ミステリー、スポーツ、青春、恋愛などなど、いろんなジャンルのエンタメにおいて
「物語の中心にだけ唯一SF」
の要素がある作品は王道。その中で名探偵コナンはその唯一許容されている点そのものを作品における最も解決すべき謎にしたという点。
デスノートだったら「なんでデスノートで人が死ぬのかメカニズムを解明することが物語の最重要課題」にしてしまうようなことをを今のコナンはやり遂げてると思うんですよ
すごすぎる・・・
これを可能にしたこのプロットは日本のエンターテイメントにおける大変な発明であり、コナンでしかなし得ない革新的なことだと思う。
それを高らかに宣言したのが、この二元ミステリーでの二人の会話であると思うんです。
黒の組織の最終的な目的が「絶対悪」でないことは既に明確
マニア読者以外だと、黒の組織って第1話で拳銃取引するような暴力団とか都市伝説で出てくる秘密結社みたいな組織と同類、というイメージで止まってることも多いかもしれない
もちろん、灰原登場後は徐々に、コナンが飲まされた薬や組織に関わる情報が明かされ始めたから、この42巻でいきなり、というわけではないけど、普通に読んでたらそんなこと気にしないと思う。
コナンは18巻より前と後でぜんぜん違う話をしていると言ってきたけど
この42巻より前とあとでも、話のレベルがグンと上がった。
APTX4869についてジンは証拠を残さず人を殺せる毒薬としか考えてなかった。
灰原は「少なくともAPTXについて」の致死性は知っていたと見られるけど、同時に幼児化も知っていた
18巻で「1匹だけ幼児化したマウスがいた」と発言する。はじめから幼児化や若返り、加齢の停止が目的の薬を作っていたと知っていたのならこういう言い方はしない。灰原はこの時点で幼児化の作用があるとみられる薬を作ってたことは自覚していた。でもそれを毒薬とは考えていない。
その後の「まあ本当に作っていたのは別の薬なんだけど」、ミストレ編では「あんな薬作っちゃいけなかった」
などと言っている。これは灰原が母・宮野エレーナの告白を知ったから。
ミストレ編で、灰原は自分が作っていた薬が本当はAPTX4869ではなく、似た作用を持つ別の薬だと知ったきっかけを独白する。
この変化そのものが、もはや組織の目的が単なる悪ではないことの証明だ。
現状、考察できる範囲では、18巻で言及したAPTX4869とは別の薬を作っていたことを灰原は自覚しているのに、薬が複数あることをコナンに隠している。
黒の組織は(「あの方」は)
薬を作り上げたいと思っているのな
薬の完成は手段なのか
薬を完成させること自体が目的なのか
まだわからない。
でもそれらが単なる悪だくみや私利私欲、利益追求ではないことは今の時点で明確ではないだろうか。金儲けや邪魔な人間の排除だけするなら、そもそも毒薬の研究などする必要がない
手段なのか目的なのかはまだ情報が少なすぎてわからないが、命の操作を実現しようとしており、コナンの決めゼリフ「真実はいつもひとつ」で単純に片付けられることでなはないだろう。
灰原登場に次ぐ、コナンの作品としての大転換をもたらした「二元ミステリー」
次に転換点になったのは、ベルモットが幼児化をジンらに隠していることが確定したミストレ編だけど、ミストレ編は二元ミステリーの後日談というか、伏線回収のための話でもある。
やっぱ二元ミステリーだなあ
うっすら、当時テレビで見た記憶あるけど、コナンが灰原に化けてた記憶と、殺したはずの新一をみてうろたえてるウォッカの記憶しかないw
RUMの正体はだれだの騒いでる人たち、二元ミステリーをもう一回正座して読み返してくれ!!