私が大好きで尊敬してやまないはやみねかおるさんの作品の素晴らしさについてダラダラと書きつけるこのカテゴリ、完全に自己満足です
今回取り上げるのは、はやみね作品の最初期、なんなら私が生まれるより前に発表された作品「そして五人がいなくなる」です
この作品は名探偵夢水清志郎と中学生の3つ子を主人公にする「夢水清志郎事件ノート」の記念すべき第一作にして、はやみねかおるの名を児童書界で一躍有名にした傑作中の傑作です
ちなみに僕は、はやみねかおる作品は「夢水清志郎事件ノート」と当ページの由来にもなっている「都会のトム&ソーヤ」の別格の2本柱があり、それらに派生するシリーズ、シリーズに属さない短編で構成されると思っています。
この「そして五人がいなくなる」は、はやみねかおるという作家の「作家性」というか「リアリティの置き方」「価値観」を宣言した作品だとも思います。
とにかくこわい
だって、小学校高学年向けからのお話なのにいきなり子供が5人も失踪するんです。これはもう読み手にトラウマを与えようとしてるとしかw
その子供消失トリックもまたいちいち手が混んでて、正直これを最初に読んだ時の自分は、話を正確に理解できていなかった気がします。子供にわからせる気がない。
それで、犯人の「伯爵」ですけど、とにかくこいつが怖い。不気味すぎる。トリック解明まで伯爵が容赦なく子供を消す感じとか本当にいちいち怖い。なんかリアリティラインがここだけすこし浮いてるんです。
はやみね作品って意外と犯人とかそのお話限りのゲストキャラの設定が少し浮いている事が多くてすごーく怖い。「機巧館」とか「ミステリーの館」とか、まじで怖い。ちょっと現実には無理があるトリックじゃないか?みたいなところがあるんだけど、オカルトのほうではなくて一応物理的に筋は通っているというバランスです
これらはそして五人がいなくなると合わせて三大はやみね恐怖作品。児童書で出してはいけなかったと思う(笑)(以上すべて褒めています)
はやみね作品初期のテイストはずっとこんな感じ
でも、この恐怖がはやみね作品で最重要の要素っていってもいいかもしれない。はやみね作品をちょっと読んだことがあれば一度は聞いたことがあるでしょう「赤い夢」。これがはやみねかおるさん最大の文学的発明だと思うんだけど、「赤い夢」ってなにって聞いて答えると「怖い」「不気味」とほぼ同義語ですわな。はやみね作品に不可欠な恐怖を大盛りにしているのがこの「そして五人がいなくなる」なんです。
あと、村田四郎さんの挿絵もこわいよなあ。ちょっと昔の海外の名作文庫が使ってそうなテイストの絵でめっちゃこわいです。
なんか、青い鳥文庫というある意味で児童書業界最大の勢力でいろんなタイプのお話がある中で、この夢水シリーズに似たタイプの作品はほかにはないのかなあと思いますね。同じはやみねかおるさん作品でも怪盗クイーン、同時期にはやった松原さんのパスワードシリーズも、謎解きという大きなテーマは同じでも決定的に恐怖が足りなかったですよね。
そういう意味ではこの夢水シリーズは終盤にいたるまで怖かった作品でしたわ。
児童書のレベルを様々な越えていた快作
僕が夢水でいちばんすきなのはこの「そして五人がいなくなる」ではないんですが、それにしても大変印象深い傑作であるとともに、はやみねかおるさんが名実ともに大きく広がった作品でした。児童書として発売したのに、 児童書のレベルを簡単に飛び越えてしまったんです。