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「消費増税」は今すぐやめるべき

「消費増税」やっぱりおかしいと思う。



・・・といっても、消費税率10%への引き上げのことを言っているわけではない。

「消費増税」という言葉の使い方のことだ

どうしてこんな変な言葉が許容されるのか。明らかに間違いではないか。

 

なぜこんな用語が広がるのか

消費増税」という用法は、2012年に「社会保障と税の一体改革」として当時の民主党自民党公明党で3党合意が結ばれ、消費税率が5%から10%へ2段階で引き上げられることが決まってから本格的に使われ始めた印象がある。

たしかに「消費税増税」の語感はよくない。「税」という同じ意味の漢字が2回出てくる。

日本語は同じ文字や語句を使うとリズムが悪くなるし、主語も述語も省略しまくる言語なので、消費税増税がなんかいやだなあという気持ちはわかる。

たった1文字とはいえ、消費増税より文字数も余計にかかるので、メディアが編み出した言葉が「消費増税」だ。

率直にいって非常に違和感がある日本語である

 

「消費増税」の成り立ち


「消費増税」は熟語である。

ならば消費・増・税というふうにこの言葉を分け、それぞれ動詞化したり話し言葉にすると意味が通じるはずだ。

焼肉定食が焼肉・定食に分けられるのと同じ。

でも消費増税に当てはめれば「消費」という税は存在せず、実際にあるのは「消費税」なので、「税」がかぶっているからといって省略すると意味は通じない。

「消費税増税」の真ん中の「税」が本来は省略できないはずだ。

「消費税の増税」を略して「消費税増税」のはずで、それをさらに略し「消費増税」にした。

でも、それによって「消費増税」を「消費税の増税」に戻すことができなくなる。

「消費増税」の品詞の種類を変えたり、てにをはを補ったりするだけでは、「消費税増税」から「消費増税」への省略は戻せない。不可逆省略になってしまっているのである。

これはいけない。

一見似たような単語に「追徴課税」がある。これが日本語として正しいのは「追徴税」という税金はなく、「追徴する」という動詞と「課税する」の動詞を合わせて用いられているからだ。

同じように「連結・純利益」の組み合わせである「連結純利益」が増えたとき

「連結純利益は増益になった」を「連結純利増益」とすると違和感をもつと思う。


それと同じレベルで「消費増税」にも違和感を感じるべきだと思う。

留萌線廃線がきまった」を「留萌廃線が決まった」というだろうか。

これも「留萌線「の」廃線」の助詞を省略して「留萌線廃線」と表現するのが正しい。


もっと極端な例をだしてみると

小泉進次郎氏が環境相で安倍改造内閣に初入閣」を

小泉進次郎氏が環境相で安倍改造内入閣」

って略してるのと同じだ。意味不明だ。

 

もっとも、「内閣に初入閣」ときの「入閣」には内閣に入るという意味が全て含まれていて、

増税」は税金を増やすという意味に留まり、どの税金を増やすかまでは示せないので同じようには比べられないのはいうまでも無い。

 

それでも、同じ政治用語で言えば

通産省入省」を「通産入省」

警察庁入庁」を「警察入庁」

がどれくらい受け入れられるかと考えれば消費増税という言い方の不適切さは明らかだ。

 

増税」ってやっぱり特殊

税金を「新設」する、「税率を引き上げる」、「対象を拡大する」などの総称を「増税」と読んでいるとするなら、この増税という用語自体がとても窮屈なように思える。

増税」は文章中では「〇〇税」に近いところで使う用語なのに、「税」という同じ意味の漢字が重複しているからどうしても「税」という漢字が目につく。

たとえば、例に出した「連結純利益は増益」という言い方はあまりしない。「益」が重複しているため、文章のリズムが悪くなるからだ。「連結純利益は増加」というだけでよい。助詞を払っても「連結純利益増加」「連結純利益増」といいかえられる。


留萌線廃線」も、「留萌線が廃止された」っていうほうが言いやすい。「留萌線廃止」とも言える。

でも、「消費税の増税」は、「増」という漢字を使う言い換えができない。

増益は増加っていってもいいし、廃線は廃止でも意味は通じる。

でも「増税」の言い換えは難しい。

「税が増える→増税」以外だと、消費税は増加も変、消費税を増強とか割増も変。

「消費税率引き上げ」とかいうしかない。

だから、「消費税増税」にするしかない。
税が重複しているのを略したくなるのは自然なことかもしれない。


それでも「消費税率引き上げ」せめて「消費税率上げ」とかに言い換えるべきだと思う

「消費増税」と似た表現がないか考えた。

もし「東京=ニューヨークの直行増便が決まった」
っていう文章があったら、おかしいってなる。「直行便が増便されることになった」ってなる。
そっか、「増便」も「便が増えた」で成り立ってて、増加だと不自然。

「増発」は使えるけれど、飛行機には使いにくい。

でも、「直行増便」が使い方として変だから

「直行便を増便する」「直行便を増便するのに備えて」「直行便の増便を先送り」

ってちゃんと書く。


なぜ「消費増税」だけこの不自然な使い方が許されるのか。日本語の時代による変化なのか、書き手の都合ありきで作り出した言葉なのか。

 

活字なら消費増税と書きたい気持ちもわかるが

特に最近は、民放ニュースを中心にアナウンサーが読む言葉も消費増税っていい始めた

文字メディアなら「消費税の増税」という表現の連続を避けたい気持ちもわかるし、見出しをつけるときには1文字が大変重要だ。

でもアナウンサーが読む原稿は、消費増税と消費税率引き上げだと、ほとんど誤差だ。

秒数にして2〜3秒。読むスピードや間のとり方を工夫すれば、プロのアナウンサーにしてみればこのくらいの誤差はなんの問題もない。

なんでわざわざ不自然な言葉を使うのか

 

言語は変化する。平安時代から比べれば日本語の動詞の活用も助動詞もだいぶ減った。

だから変化は必要だと思う。

でも消費増税っていう、こんなにピンポイントで日本語のルールから逸脱する例が出るのはどうだろう。これがさっきの直行増便とか留萌廃線にも波及するなら一考の価値があるかもしれない。

 

でも、そんな気はしない。

 

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