いつかはトムソーヤ

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15時17分、パリ行き(The 15:17 to Paris)の簡易なネタバレなし感想

15時17分、パリ行き」を試写会で見る機会に恵まれました。




2015年にヨーロッパの国際列車の車内で実際に起こったタリス銃乱射事件をもとに、犯人に立ち向かった3人の青年の半生を語りながら、事件に遭難するまでを少しずつ描く作品です。監督は「グラン・トリノ」「アメリカン・スナイパー」「ハドソン川の奇跡」が近作、アカデミー監督賞を二度受賞、世界最高の映画人クリント・イーストウッドです。

まず、この映画「ハドソン川の奇跡」以上に、そもそもネタバレ云々の映画ではないです。タリス銃乱射事件のことを調べて見に行っても全然大丈夫。映画の内容全部聞いたあとでも見てOKな映画です。

この映画の特筆すべきところは、事件の当事者がそのまま本人役で出ていることですが、それの何がすごくて画期的かは著名な人たちの解説でわかります。


ちなみにぼくはほとんど彼らが普通の人だということを忘れてました。だから、映画の本筋が終わったあとの後日譚みたいなところで、実際当時撮影された、事件に居合わせた人たちの映像が出るのですが「ああ、映画の中と顔同じや!同じ人や!」ってびっくりしてしまうという(笑)。

一番今回はぁ…ってなったのは、イーストウッドが自分とかなり近いようなところを映画にしてくれた!ってところ。

とあるシーンでは「セルフィーしようぜ」「インスタ映えじゃん」「SNSアップする」「Skypeつなぐよ」「Wi-Fi飛んでねえ」みたいな会話が出てきます(ああ、これらは本筋の話とはなんの関係もないです)。まさかイーストウッド映画でこんなセリフを聞くとは。

現代の自分たちが生きてるすぐ隣をついにイーストウッドは映画にしたな!というところに感動しました。

ハドソン川の奇跡同様、事件自体が一瞬ですし、かなりこぢんまりした話ですので、前半はけっこう退屈したところもあったんですが、そこはたぶん作り手もわかってのこと(それにしてもちょっと待ちくたびれたかな)
クライマックスはああやっぱりなっていう演出なんだけど、やっぱりぐっときてしまいました。

映画として普通に面白いし話もわかる、それでいて受け手が考えないといけない部分がとても多い。

俳優を引退したあとのイーストウッド作品の系譜のとおり、すんなりみてよかったと思える映画です。

ちなみに、彼らは軍に所属していて、命がけで人を助けたことを一方的に英雄として描くことについて「賛否両論ある」のような感想はちょっと違うかなと思います。

そういうことを無理やり考えないといけないのでしょうか。アメリカン・スナイパーならそういう議論になるのもわかるけれど、この映画は、普通にいる、普通の人の話です。
銃規制と結びつける?それは不自由な見方ではないですかと。

とにかく、イーストウッド新作でしょう?それはもう無条件で見に行くでしょ!!